「ミネルバリスシオ」早いエイジングが特徴のイタリア産ヌメ革
ミネルバリスシオはエイジングの早さが特徴のスムースレザーです。
ピット鞣しという手間と時間が掛かる方法で鞣すことで、しっかりと繊維の詰まった上質な革に仕上がります。
鞣しの後、タンナーが独自に配合した特製のオイルをたっぷりと浸透させ、しっとりとした手触りと、適度な柔軟さが付与され、しなやかさの中にしっかりとしたコシが生まれます。
仕上げに革の風合いが活きる染料で色付けされ、ミネルバリスシオは完成します。
ちなみにミネルバリスシオには兄弟のような位置づけに「ミネルバボックス」と呼ばれる革があります。
なめらかな銀面のリスシオと違い、ボックスは「空打ち(何も入っていない樽の中に革を入れ回す)」と言う方法で軽めのシワ加工が施されています。
空打ちにより繊維がほぐれ、わずかですがボックスの方が柔らかく仕上がり、個性あふれるシボが付与されています。
二つの革での大きな違いは見た目ですので、選ぶ際は見た目の好みで選択すればいいと思います。
ミネルバリスシオの特徴
”革らしさ”を存分に感じられる
見た目の印象はまさしく「革!」といった感じで、”革らしさ”を存分に感じることが出来ます。
過度な加工をしない事でとてもナチュラルな仕上がりになっているのがミネルバリスシオです。
表面はなめらかな銀面を持ち、革好きにはたまらない魅力を持っています。
オイルをたっぷりと含んだしっとりとした質感
ミネルバリスシオは製造の過程で、通常の革よりも多くのオイルを含んでいます。
オイルをたっぷり含んだ革にはしっとりとした心地よい手触りが生まれ、手に吸い付くような優しい感触です。
エイジングの早さ
ミネルバリスシオの大きな特徴にエイジングの早さがあります。革製品におけるエイジングは
とあります。植物タンニン鞣しの場合:製品革では、加脂剤が徐々に酸化され、酸化生成物およびそれらとタンニン分子や革との化学反応によって濃色化し、味わい深い革になる。
引用元:JLIA一般社団法人日本皮革産業連合会『皮革用語辞典』
ミネルバリスシオは製造過程で通常の革よりも多くのオイルを含んでいるため、比較的早くエイジングが起こります。
またタンナー独自の特製オイルで深く上品にエイジングしていきます。
上の写真は裁断前の革の一部を切り取って比較したものです。
左が保管時にしっかり紙に包まれていた部分、右が保存紙に収まりきらずはみ出したままだった部分です。
保管期間は約3カ月程度。未使用の状態で、保管場所もなるべく光の当たらない暗い場所に置いていたのですが、ここまで色が変わってきます。
これが実際に製品になり毎日使うとなるとさらに短期間でエイジングが進むと思います。
革1枚1枚に個性が表れる
こちらは人によってはメリットでありデメリットになる部分だと思いますが、ミネルバリスシオは革の内部まで浸透する着色「染料仕上げ」によって色付けされます。
内部まで浸透する染料仕上げは、表面がムキ出しの状態で仕上がります。そのため生体時のキズ・シワが隠れずそのまま残ります。
また染料仕上げは原皮の影響を受けやすく、ロット(まとまった数量)ごとに色のズレが生じたり、同一の革内でも染めムラが起きやすい染色です。
これらはすべて天然素材特有の個性であったり、人の手によって丁寧に製造された証です。
均一な仕上がりが売りの型押しや顔料仕上げでは得られないとても魅力的な部分ですが、均一な仕上がりが好みの方には少し気になる部分かもしれません。
傷がつきやすい
ミネルバリスシオは表面がムキ出しのため、キズに弱い性質があります。
少し引っかいたりこすったりしただけで簡単にキズがついてしまうデメリットがあります。
しかしミネルバリスシオは革の内部にたっぷりとオイルを含んでいるため、このオイルが革の中を移動してキズを目立たなくします。少しのキズならすぐに馴染むメリットもあります。
※ミネルバリスシオに限った話ではありませんが、大きく深い傷がついた場合はどうにもならないのでご注意ください
衣服に革の色が移りやすい
ミネルバリスシオに使用されている染料は自然な風合いや深い色合いが表現できる染色方法なのですが、タンニン革との結合率が若干弱く、また水に溶けやすい性質も持っています。
そのため体との密着率が高い製品に使用した場合、摩擦や蒸れによって革内部の染料が移動して衣服に色が移ります。
ハンドバッグや財布・小物など衣服との接触が少ない製品であれば色移りの心配はありませんが、ショルダーバッグや、リュックなどに使った際は、衣服への色移りが起きます。
ミネルバリスシオ まとめ
メリット
革の風合いがとても強く表れているので、革らしさを味わいたい方にオススメ
エイジングが比較的早く実感できる
オイルをたっぷり含んだしっとりとした質感
軽いキズなら馴染んで目立たなくなる
デメリット
銀面(革の表面)がむき出しの状態なので、キズ、汚れに弱く、扱いには少し気を遣います。(ただし革内部のオイルが移動するので、軽いキズならすぐに馴染みます)
生体時のキズ・シミが隠れないので、均一な仕上がりが好みの方は気になるかもしれません。
染料仕上げは原皮の影響を受けやすい着色方法のため、革ごとに微妙に色がずれる。また同一の革の中でも染めムラが起きる。
衣服などへの色移りが激しく、ショルダーバッグやリュック等、体との密着が高い製品に使用した場合、色移りが起きます。
買った当初の色味・雰囲気を維持したい方には向かない。
ミネルバリスシオでマネークリップを作ってもらいました
エイジングの経過や革の特性をしっかりと知るには、使ってみなければわからない部分もあるので、実際に使ってみてエイジング具合や使用感をお伝えして行ければと思います。
作ってもらったのはマネークリップのコインタイプです。カラーは迷いましたがここはブラウンを選択。
『マネークリップ コインタイプ』は紙幣・硬貨・カードを薄くコンパクトに収納できるアイテムです。
全体的な収納力は決して高くはありませんが、普段現金もカードも大量に持ち歩かない身としては、このサイズ感は気に入ってます。
出来上がった感想はさすがミネルバリスシオといった所で、小物でも存在感抜群に出来上がっています。
ただ人によっては少し気になるかなと思った部分がミシンの押さえ跡。
銀面がむき出しでコシがあるためか、他の革よりも強く残っています。
使用や性能には全く影響しませんし、使った感じ全く気になりませんが、気になる方はこの部分も念頭に置いてご検討ください。