ミネルバリスシオを使ったドクターリュック
ミネルバのリスシオでドクターリュックを作ってもらいました。
マネークリップやスマホケースなどの小物では何点か作りましたが、バッグでは今回が初めてです。
小物でも風格のある革でしたが、バッグともなるとえも言われぬ佇まいです。
これから日常遣いしてキレイにエイジングさせていくつもりですが、ミネルバリスシオは銀面がムキ出しのとてもデリケートな革です。
小物でもかなり丁寧に使っていたつもりでしたが、いつ付いたか分からない細かな傷や凹みは避けられませんでした。
バッグだとさらにキズのリスクが高くなりますが、大切に使っていきたいと思います。
ミネルバリスシオ
ミネルバリスシオはイタリアのタンナー「バダラッシィ・カルロ社」が製造するスムースレザーです。
上質な牛革のさらに良い部分だけを植物性タンニンじっくりと鞣すため、革に負担が掛からず繊維の詰まった丈夫で美しい革になります。
そして仕上げにタンナー秘伝のオイルを鞣し同様じっくりと時間をかけてたっぷりと浸透させていきます。
通常の革よりも多くのオイルを含んだミネルバリスシオはしっとりとした質感で人肌によくなじみます。
また塗膜となって革の表面を覆う顔料と違い、革の内部に浸透して着色する染料は革の表情を隠さないので天然素材らしい自然な仕上がりとなります。
ヘッジでは同じく染料で着色された国産革のビゾンテや英国のブライドルレザー、ドイツのシュランケンカーフなど風合いが生きた革が沢山ありますがミネルバリスシオはヘッジが扱っている革の中で風合いを感じられる革です。
”革らしさ”を存分に味わいたい革をお探しの方は是非一度ミネルバリスシオをご覧ください。
スピーディなエイジング
約半年使用したスマホケース(下は新品時のミネルバリスシオ)
またミネルバリスシオはオイルの含有量が通常の革よりも高いため、経年変化が比較的早く表れます。
使い始めの若々しい色から貫禄を帯びた深い色合いに濃色化していくエイジングを短期間に味わいたい方にもオススメします。
ミネルバボックス
ちなみにミネルバリスシオには兄弟分にミネルバボックスという革があります。
滑らかな銀面のリスシオに対してボックスは程よいシワ加工が施されています。
型押しではなく革自身にシワを付与しているので同じ模様はなく革一枚、製品一つ毎に個性が現れます。
ミネルバボックスもリスシオと同じく取り扱いがございますので、革らしさに加えて個性を楽しみたい方は是非ミネルバボックスもご覧ください。
デメリット
多くの革好きを魅了するミネルバリスシオですが、いくつかのデメリットと呼ばれる要素があります。
中には人によってメリットデメリットが分かれるものもあります。
いくつかご紹介しますのでご購入を検討いただく際の参考になればと思います。
デリケートな銀面
冒頭でも書きましたが、ミネルバリスシオはとてもデリケートな銀面をしています。
ミネルバは革の内部に浸透する染料による着色が施されているので、銀面がムキ出しの状態で仕上がります。
その他コーティングなどの保護なども施されていないので、外からの影響を受けやすくなっています。
そのため少しの爪が当たっただけでひっかき傷が付いたり、固い物に押されると凹み傷が付いたりと扱いに少々気を遣います。
見た目が不均一
これは人によってメリットにもなりデメリットにもなる要素だと思っています。
染料で染められたミネルバは銀面に乗る形で着色する顔料と違い革の表情を隠しません。
そのため牛が生きていた時に付いたキズやシワ、あざなどがそのまま残ります。
また同じ革でも場所によって厚みや繊維の密度が違うため革の内部まで浸透する染料染めだと全体が均一に染まらず、染めムラが起こります。
残念ながら日本ではこれらのナチュラルマークは「キズ」と認識されることが多くあまり受け入れられないのが現状です。
なので工房の職人も可能な限り避けて裁断いたしますが、バッグをはじめ一つのパーツが大きくなる製品だとナチュラルマークは絶対に入ります。
ですがこれは天然素材であることの何よりの証であり、製品ごとに表れる個性となります。
一つとして同じものがない、かつ自然な風合いを残すのが染料染めの魅力です。
その魅力を最大限感じることが出来るのがミネルバリスシオという革なので、ミネルバリスシオを検討される際にはこういった不均一性もメリットとして楽しんでいただけたらと思います。
黒ジミ。パーツの大きいバッグだと避けて裁断する事は出来ません。
染めムラ。
天然素材に染色したことによる唯一無二の美しいグラデーションが製品の価値を上げています。
色落ち色移りしやすい
小物や財布で使う際にはあまり気にする必要はありませんが、染料染めのミネルバは色が落ちやすい性質があります。
染料は革との定着率が悪く強い摩擦で染料が服に移ることがあります。
また水に溶け出しやすい性質もあるので、密着して汗で蒸れた箇所も色が落ちる場合があります。
こちらはミネルバのドクターリュクを背負って夏場に自転車で一時間ほど走った後のシャツです
写真では分かりにくいかもしれませんが、体と密着していた背中と肩甲骨の辺りが汗で蒸れて落ちた染料が服に付着しています。
この色落ちはミネルバをはじめとした染料染めの革を使う上で避ける事は出来ないので、バッグに使用される際にはご理解の上お選びください。
ただ同じバッグでもハンドバッグやセカンドバッグなど体との接触が少ないバッグだと色落ちのリスクは軽減できます。
また同時に色移りしやすい革でもあるので、同じく色落ちしやすい素材を身に着けている時はミネルバに色が移らないよう注意が必要です。
キレイに使い続けるために
経年変化を楽しんでいただけるミネルバは使う人と一緒に年を重ね味わい深くなっていく革です。
革には可塑性(ものに力を加えて変形させ、力を取り去っても形が戻らない性質)と呼ばれる性質があり、特にミネルバのような植物タンニンレザーは可塑性が良く使うほどに持ち主の体に馴染んでいきます。
見た目の変化と共に自分だけの形に馴染んでいく革製品は愛着もひとしおです。
せっかくならキレイな状態を保ちながら使い続けたいものです。
そのためには定期的なクリーニングと栄養補給をオススメします。
レザーケアの基本はいかに購入した当初の状態を保つかが大事なので使いはじめからケアを始めていただくと末永くキレイな状態で使い続けることが出来ます。
ヘッジでもいくつかのケア用品を販売しているので興味のある方はスタッフまでお問い合わせください。